日本のクロ

靖国神社。

夕暮れの、暮れていく感じが違う。
日本に戻ってみてまず思ったことです。

なぜかというと、陰が、濃い。
これって日本の方がベトナムより北にあるから?

じわじわと夕闇が重なっていく様子が感じられるというのは、ベトナムの夕暮れではあまりなかったことだと思います。

そういえば日本には黒に名前がありますね、漆黒。広辞苑では「漆黒 − 漆のように黒くて光沢のあること、またその色 例)漆黒の髪、漆黒の闇」とあります。
日本人は明暗に対して感覚が敏感なのかもしれない。漆黒っていうのは、考えれば考えるほど面白い表現です。

まずこれは私が“漆黒”と聞いたときのイメージだけど、“表面”“艶”“層”っていう空間的な言葉が最初にきたのが面白い。空間的な言葉ってなかなかないですよ。“赤”だったら“愛”“情熱”とか“白”だったら“平和”“純情”“無”というふうに感情や他の概念と繋がってる色はたくさんあるけど、漆黒っていう色は、成り立ちそのものが空間的だと思うんです。“黒”という二次元の概念と、“闇と光”という三次元の概念をまたいで構成されているように思えます。
漆黒という言葉そのものが空間的というか、構造的な概念によって成立していて、黒に青を足すとか、黒に緑を足すとか、そういうようなことだけでは成り立っていないというのが、すごいな、と。いや、色に対してこれだけ複雑な概念を共有している日本人ってすごいんじゃないか…なんて一人で満足してみたりして。笑

でもベトナム人のLy先生はこう言ってました。
「日本の夜はベトナムよりも電気がたくさんついているけど、ベトナムより暗いし怖いですよ。電信柱の陰とか、何かいるような感じがしますね。あれは不思議、どうしてでしょう」
う〜ん、日本人だけが感じるわけではないようです。
日本のクロ。