豊かさのモト

なにかの雑誌で、日本の美術館建設ラッシュを批判する記事を発見。
その記者にいわせると、日本の美術館は流行りモノを追いすぎるという。たしかに、その気は大いにある。最近アートが流行っている。
ちょうど表参道にMoMAデザインストアができたので行ってみたら、他のお店がガラガラなのにそこだけ混んでいたりして「アートが流行ってるんだなぁ」と思っていたところだったのでとても共感。

そこへもうひとつ、“質”について書かれた文章を発見。
その文章は、誰にでもできることだけどきちんと手間がかけられているがゆえの質の良さ、について書かれていました。たとえばアイロンのかかった下着を着るとか、磨き込んだ靴を履くとか、質の良い魚や肉を単純な味付けで食べるとか、そういう事が当たり前であることの大切さを書いているんだけど、ふと前の美術館批判の記事を思い出して、ああ私が大切にしたいのはこっち(後者)なんじゃないかなって思いました。

きっと美術館に行ったりするとき、私たちは豊かさを求めて行くんだと思うんです。
だけど本当に豊かで満たされた気持ちというのは、近所の豆腐屋さんのお豆腐を食べておいしいとか、朝から部屋の掃除をしっかりやるとかいう、生活の質を良くしていく細やかな行為の積み重ねで醸成されていて。そういう生活の中にあるべき質の良さとか豊かさに気づかないで、豊かさを与えてもらいに美術館に行っても意味がないんだな、ってその文章を読んでなんとなく思いました。

だから先の話でいえば、最近の美術館が流行りを追うような展示をするのは見に行く私たちの責任でもあって、「本気でいいものを作らなきゃだめだ」って思ってもらわなくちゃいけない。流行りモノを追った展示の中でも何が良いのか悪いのか、何が自分の感性に合うのか合わないのか観客が分別できれば展示自体も良くなっていくだろうし、その判断はまず一人一人が生活の中に“質”を持っていないとできないんじゃないでしょうか。
関係のないような2つの文章から、そんな事を思った日曜日でした。
精進精進。